ベルハーの凝った作りの楽曲が思いの外好みで色々と聴いているところですが、
ズレた音程なんていくらでも修正がかけられるこの時代に、
メンバーの不安定な歌唱がそのまま収められ、そしてそれが何故に気にならず、
むしろ特徴のひとつと好意的にすら捉えられるのか、と思い始めまして。
(上の動画はライブですが、CD音源でも大差ないです。こんな感じです。)
ボンヤリと考えているうち、ふと思い出したことがあり昔の雑誌をひっくり返してたら
目当ての記事があった。
表紙がSPANK HAPPYのQuickJapan Vol.36(2001年)、と、
当時はまだナンバーガール、向井秀徳と黒田硫黄のイラストが表紙のVol.42(2002年)
思いだしたのは菊地成孔氏のインタビュー、対談中の発言。
vol.36のインタビューより
「極端なこと言ったらそろそろ音痴が聴きたいんだよね。不景気な時代には圧倒的な歌唱力が必要。金なくて絶望的なときに音痴の歌なんて絶対ファック」
「女の子の歌い方って三つしかない。ディーヴァ系の驚異的な歌唱力、エイベックスに代表される宝塚の男役みたいな歌い方。あとは自分から率先してなるロリータ。良くも悪くも"擬ロリータ"として記号的に拡張されたもの」
「「"痛み"とか"弱者"とか"未熟"をそのまま表現するようなものは、今ない。そういう意味でもそろそろ音痴が聴きたい。音痴もやがてはテクノロジーに収斂される可能性がある。ローファイは90年代にテクノロジーになった。」
いわゆる"擬ロリータ"ではないと思うんですよねベルハーって。
歌唱については、今が好景気とは決して思わないけど
アイドルシーンに関しては飽和してるような気がするし、そういう中では活きてくるんでしょうか。
確かに盛り上がってすらいないシーンで、あの歌唱はキビしい気もするなという見解です。
彼女らの不安定な歌唱はテクノロジーによるものではないけどね。
プロトゥールスとかで音程をわざとズラす時代がくるのかなあ。
「21世紀は資質とメンタリティの組み合わせが一回バラバラになると思う。『自分がロリータ』
という自意識ゼロで唄ってるのにプロデュースによって児童合唱団みたいな歌い方になる。
自意識と実際の声が違う意味においては今までになかった歌い方で、すごく妄想的に言うと
ゲイ・ミュージックと同じ。『心は女だけど体は男』っていう違和感と乖離、そこから何かが生まれてくるわけじゃないですか。」
「何にしても『年齢』と『性別』、この2つはこれからどんどんバラバラになる。」
「基本的に『声』『顔』『身体』を変えることは無理。ということはいくつかのプリセットをみんな持ってる。これから 『年齢』『性別』『声』『顔』『身体』『メンタリティ』の組み合わせの定番がなくなる」
だいぶ話逸れた気もしないでもないけどw、ベルハーについて言えば
あの楽曲に、あの歌唱が乗ってくるのは、自分にとってはとてもミスマッチなのです。
この歌唱にこの楽曲、って組み合わせは運営は意識してやっているそうなので、
まあその戦略に見事にはまってしまったワケですな私は。
(ミスマッチなら必ず良い(もしくは悪い)というわけじゃないのも難しいところだけど)
アイドル見る時って裏にいるスタッフ、つまりは運営をどうしても意識しませんか。
昔ってどうだったんだろ?おニャン子のときにファンがどこまでスタッフを意識してたのかな。
モー娘。のときは、もう完全に意識せざるを得ないですよね。
つんくは元々が有名だから、今とは少し形が違うと思うけど。
今回、ベルハーの曲を買おうと思って配信サイト見て回ってたんですが
レコチョク、iTunes Storeにはないんですよね。"ライスとチューニング"のRemixがあっただけ。
で、結局ototoyに行ったらここでは揃ってて、ライブ音源まで売ってる。
運営の戦略ってのも、どういう作戦なのかな面白いなーと考えてて思い出したのが
vol.42での、ラーメンズの「つくるひと」での対談でした。
「今やアーティストがどのくらい露出するかなんて話は、音楽業家の隅から隅まで、お茶汲んでる人まで考えてますね。自分がお茶汲んでるアーティストに対して(笑)」
「そのくらい情報戦としての"露出"の問題が一部の策略家だけのものじゃなく、末端の購買者までに浸透してる状態。CD買ってる地方の高校生でさえ『このアーティストはどの辺のポジションにいて、今後どの辺に露出したいんだろうな』ってことを考えている状況の業界」
「昔みたいに「受け手は何もしらない」って時代ではなくなっていて、二重になってる。だからどんどん戦略の掛け合いがメタ・レヴェルになってきている。」
「今や自我の根底から出てきたものを出しても、まだそれがマーケティングされた『商品』に見えざるをえない状況なんです。(作り手としては)だから、そういう時は何も考えないのが一番いいんじゃないかと(笑)」
いまやオリコンじゃなくて"レコチョクランキング"なんてコーナーをテレビで見ることあるし
iTunes Storeが大きな存在であることに変わりないのはご存知かと。
そうして中、ototoyがどういう位置付けなのかは、よくわからないのだけれど
決して業界の最大手ってワケではないと思うんですよね。(違ってたら大変失礼だけど)
そこをあえて限定的に選ぶという戦略。
というかレコチョク、iTunesだとメジャーじゃないとダメなの?
ただ、ライブ音源の配信もしかけるなど運営さんの戦略を考えると面白い。
そしてそれはただの自分の考えすぎかもしれないww。どっかにインタビューないですかね。
余談ですが運営自身がどこまで露出するか、という加減も考えると面白いのかも。
ももクロにしろAKBにしろ、結構目立った存在ではある。
だけど運営が露出すりゃ良いってものではもちろん無いしね。
これはメジャーどころでも差があるだろうし、最近では、ゆるキャラとセットで
地方活性化のコマにされてる感もある"ご当地アイドル"は全然なんじゃないかな。
(さらに余談を重ねると、ふなっしーは運営自身が中に入っちゃったパターンかな、と)
そう考えてたら、第二期SPANK HAPPYって、別にアイドルグループではないけど
いわゆる"運営"が前面に登場して一緒に唄ってたユニットって見方もできるわけですね。
このコンビの最後のリリース曲に至っては「菊地成孔 ft.岩澤瞳」名義だもんな。
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